行政書士として活動している中で、「もっと自分の専門分野を知ってもらいたい」「他の行政書士との違いを伝えたい」「紹介だけに頼らず、指名で相談してもらえる状態をつくりたい」と考える方もいるでしょう。
行政書士は、許認可、相続・遺言、外国人関連、法人・事業支援など、幅広い分野で依頼者を支援する専門家です。一方で、業務範囲が広いからこそ、依頼者から見ると「どの行政書士が、何に強いのか」が分かりにくいという側面もあります。
そこで、自分の専門分野や実務経験、仕事に対する考え方を体系的に伝える方法の一つが書籍出版です。
書籍を出版することで、単に「行政書士であること」を伝えるだけでなく、「どのような問題に詳しいのか」「どのような依頼者を支援したいのか」「どのような考え方で業務に取り組んでいるのか」を読者へ伝えることができます。
このページでは、行政書士が書籍を出版するメリットや出版テーマの決め方、商業出版と企業出版の違い、出版した書籍を相談や営業へ活用する方法について解説します。
行政書士が出版するメリットの一つが、自分の専門分野を分かりやすく伝えられることです。
行政書士の業務には、建設業をはじめとした各種許認可、相続・遺言、外国人の在留に関する手続き、法人や事業者の支援など、さまざまな分野があります。
そのため、「行政書士です」と伝えるだけでは、相談者から見たときに、どのような相談を得意としているのか分からないことがあります。
たとえば、建設業許可をテーマにした書籍を出版すれば「建設業界に詳しい行政書士」、外国人雇用に関する書籍であれば「在留資格や外国人雇用に詳しい行政書士」として認識してもらいやすくなります。
「行政書士」という資格ではなく、「○○の相談ならこの行政書士」というポジションをつくるうえで、書籍を活用することができます。
行政書士のサービスは、商品を手に取って品質を確認できるものではありません。
依頼者は相談前に、ホームページの内容、プロフィール、料金、実績などから「この行政書士に相談してよいのか」を判断することになります。
しかし、ホームページの限られた情報だけでは、その行政書士が何を大切にしているのか、どのような考え方で依頼者を支援しているのかまで伝えることは簡単ではありません。
書籍であれば、制度の説明だけでなく、実務でよくある失敗、相談するタイミング、手続きを進めるうえでの考え方などを一冊の流れとして整理できます。
読者が書籍を通じて考え方まで理解できれば、問い合わせ前から一定の信頼関係をつくることにつながります。
行政書士を探している人が複数の事務所を比較するとき、分かりやすい比較材料の一つが料金です。
ホームページに掲載されている情報が「対応業務」「料金」「所在地」程度であれば、依頼者にとっては違いが見えにくく、価格で比較されやすくなることがあります。
一方、書籍を通じて専門分野、実務経験、判断軸、支援スタンスまで伝えられれば、「一番安い行政書士」ではなく、「この問題なら、この先生に相談したい」という指名理由をつくりやすくなります。
特に、手続きだけではなく継続的な相談や事業支援まで行っている行政書士にとって、価格以外の価値を伝えることは重要です。
行政書士は個人向けの相談だけでなく、事業者の許認可や法人関連の手続きなど、企業を支援する業務もあります。
法人から相談を受ける場合、担当者や経営者は「この分野について十分な知識や経験があるか」「継続して相談できる専門家か」といった点も含めて依頼先を判断します。
特定業界や特定業務について書籍を出版しておけば、自社の専門性を事前に理解してもらうための資料として活用できます。
営業時や経営者との面談、紹介を受けた際などに書籍を渡すことで、一般的な事務所案内だけでは伝えにくい専門性を説明することもできます。
書籍を出版するためには、自分の専門分野や考え方を一つのテーマとして整理する必要があります。
そこで整理した内容は、本だけに使う必要はありません。
たとえば、書籍のテーマをもとにセミナーを開催したり、章ごとの内容をWeb記事や動画、SNSで発信したりすることもできます。
出版を単発の取り組みにするのではなく、行政書士としての情報発信全体の軸として活用することで、専門家としての認知を積み重ねやすくなります。
行政書士の業務は幅広く、同じ資格を持っていても、実際に力を入れている分野は事務所によって異なります。
たとえば、建設業許可などの事業者向け許認可を中心に扱う行政書士もいれば、相続・遺言に注力する行政書士、外国人関連業務に強い行政書士もいます。
幅広く対応できることは強みですが、情報発信では「何でも相談できます」と伝えるだけでは、かえって専門性が見えにくくなることがあります。
相談者が行政書士を探すときに知りたいのは、資格を持っているかどうかだけではありません。
「建設業許可について詳しいのか」「外国人を雇用する企業の支援経験があるのか」「相続について相談できるのか」など、自分が抱えている問題に詳しいかどうかを見ています。
そのため、行政書士が情報発信や出版をするときには、自分ができることをすべて並べるよりも、誰のどのような問題を解決したいのかを明確にすることが重要です。
書籍では、一つのテーマについてまとまった情報を伝えることができます。
そのため、「行政書士の仕事をすべて紹介する本」よりも、「建設会社が初めて許認可を考えるときに読む本」「外国人雇用を始める企業向けの本」など、読者と課題を絞ったほうが専門性は伝わりやすくなります。
テーマを絞ることは、対応できる業務を減らすことではありません。
まず一つの分野で「このテーマに詳しい行政書士」と認識してもらい、そこから他の相談へ関係を広げていくという考え方もできます。
建設業をはじめ、事業を行うために許可や届出などが必要になる業種があります。
こうした事業者向け業務を得意としている行政書士であれば、制度そのものではなく、経営者が実際に困りやすい場面をテーマにする方法があります。
たとえば、次のようなテーマが考えられます。
単に申請方法を説明するだけではなく、経営者がどの段階で専門家へ相談すると進めやすいのかまで伝えることで、実務経験を生かした書籍にできます。
相続や遺言に関する業務を扱っている行政書士であれば、一般の人が将来について考え始めるきっかけになるテーマと相性があります。
たとえば、次のようなテーマが考えられます。
相続には、行政書士以外の専門家が対応する業務もあります。そのため書籍を作る際には、個別の内容に応じた業務範囲を確認しながら、行政書士としてどのような支援ができるのかを適切に伝えることが重要です。
外国人関連業務を得意とする行政書士であれば、外国人本人だけでなく、外国人を採用する企業を読者として設定することもできます。
特に企業側には、「外国人を採用したいが何から確認すればよいのか分からない」「採用後に必要な手続きを知りたい」といった悩みがあります。
たとえば、次のようなテーマが考えられます。
申請取次など実際に提供している業務と書籍テーマを一致させることで、出版後の相談にもつなげやすくなります。
法人設立に関する手続きや、起業後に必要となる許認可などを支援している行政書士であれば、これから事業を始める人を対象にした出版も考えられます。
たとえば、次のようなテーマです。
「行政手続きの解説書」にするだけでなく、起業家が事業を進める中でどこにつまずきやすいのか、どのタイミングで確認しておくべきなのかまで整理すると、行政書士ならではの書籍になります。
現在は、行政機関のWebサイトを確認したり、検索エンジンや生成AIを使ったりすることで、制度の概要や一般的な情報を調べやすくなっています。
そのため、「建設業許可とは何か」「遺言書にはどのような種類があるか」といった一般的な情報だけをまとめても、著者である行政書士自身の違いは伝わりにくいでしょう。
もちろん、制度を正しく解説することは重要です。しかし、出版によって専門家としての価値を伝えるのであれば、制度の説明に加えて、実務経験から得た視点を盛り込むことが重要です。
実際に多くの相談へ対応している行政書士だからこそ、「もっと早く相談していれば進めやすかった」「この点を事前に確認していれば困らなかった」と感じるケースがあるでしょう。
こうした実務上の気づきは、制度の条文をまとめただけでは得られない情報です。
たとえば、「許認可の準備を始める時期」「必要書類を集めるときにつまずきやすいポイント」「事業内容が変わったときに確認すべきこと」などを伝えることで、経験に基づく専門性を示せます。
行政書士へ相談したことがない人は、「どこまで自分で進められるのか」「いつ専門家に相談すればよいのか」が分からないことがあります。
そこで書籍の中で、専門家へ相談を検討したほうがよい場面や、相談前に整理しておくとよい情報を伝えることも有効です。
手続きを必要以上に難しく見せるのではなく、読者が自分でできることと、専門家へ相談したほうがよいことを整理することで、信頼につながりやすくなります。
同じ制度を扱う行政書士でも、どのような支援を重視するかは異なります。
たとえば、経営者から相談を受けた際に、手続きを完了させることだけを目的とするのか、今後の事業展開まで確認しながら必要な手続きを整理するのかによって、支援のあり方は変わります。
こうした「何を大切に仕事をしているのか」まで書籍で伝えることで、「この行政書士に相談したい」という理由をつくることができます。
書籍を出版したら、ホームページに表紙画像やタイトルを掲載するだけで終わらせないことが重要です。
書籍紹介ページには、次のような情報を掲載するとよいでしょう。
「本を出版しました」という実績紹介ではなく、読者が書籍を読んだ後、次にどのような行動を取ればよいのかまで設計することがポイントです。
問い合わせをした人に、面談前に書籍を読んでもらう方法もあります。
基本的な制度や考え方を事前に理解してもらえれば、初回相談ですべてを一から説明するのではなく、その人特有の問題について話しやすくなります。
また、相談者側も、著者である行政書士の考え方を理解した状態で面談できるため、「自分と考え方が合いそうか」を判断しやすくなります。
建設業、相続、外国人雇用、起業などは、セミナーとの相性もよいテーマです。
書籍と同じテーマでセミナーを開催し、参加者へ書籍を渡せば、セミナー終了後も内容を振り返ってもらえます。
セミナーで興味を持った人が書籍を読み、さらに詳しく知りたい場合に相談へ進むという流れをつくることもできます。
企業向けの業務を行っている行政書士であれば、書籍を営業ツールとして使うこともできます。
たとえば、経営者との商談、金融機関や他士業との面談、取引先から紹介を受けた際などに、自分の専門テーマについてまとめた書籍を渡す方法です。
サービス資料では自社の業務内容が中心になりますが、書籍では読者に役立つ情報をまとまった形で提供できます。
そのため、売り込みだけではなく、自分の専門性を理解してもらうための営業コンテンツとして活用できます。
書籍は、一冊を読んでもらうことで深く理解してもらいやすい一方、最初から書籍を手に取ってもらえるとは限りません。
そこで、SNSやYouTubeなどでテーマの一部を発信し、興味を持った人に書籍を案内する方法があります。
たとえば、外国人雇用をテーマにした書籍であれば、YouTubeで「初めて外国人を採用するときの注意点」を解説し、さらに詳しく知りたい人へ書籍を紹介することができます。
「SNS・動画で知る→書籍で深く理解する→ホームページで相談する」という流れをつくることで、それぞれの媒体を役割分担させることができます。
商業出版とは、出版社が出版費用を負担し、書籍を販売することで収益を得る出版方法です。
出版社が「読者に需要がある」「販売が見込める」と判断した企画が採用されるため、希望すれば誰でも出版できるわけではありません。
行政書士の場合、次のようなケースでは商業出版を検討できます。
自分が書きたい内容だけでなく、「誰がお金を払って読みたいと思うのか」という市場性も重要になります。
企業出版は、著者側が費用を負担し、目的に合わせて書籍を企画・制作する出版方法です。
書籍そのものの販売収益よりも、ブランディングや問い合わせ、営業など、出版後の事業成果を目的として活用できます。
たとえば、次のような行政書士に向いています。
出版部数を増やすことだけではなく、「書籍を読んだ人に、その後どう行動してほしいのか」から逆算して企画できることが特徴です。
出版を考えるとき、最初に決めたいのが「誰に読んでもらいたいのか」です。
「行政書士として知名度を上げたい」だけでは、出版テーマや書籍の内容を決めにくくなります。
たとえば、次のように具体化します。
対象となる読者を明確にすることで、その人が抱える悩みや知りたいことから出版テーマを考えられるようになります。
次に、自分が今後どのような専門家として認識されたいのかを考えます。
現在受けている依頼が多い分野だけでなく、今後事務所として伸ばしていきたい業務から考える方法もあります。
「行政書士として本を出す」ではなく、「○○に強い行政書士として本を出す」ところまで整理することが重要です。
出版テーマと実際に提供しているサービスが一致していれば、書籍を読んだ人から相談があった際にも、その後の業務へつなげやすくなります。
出版は、本が完成した時点で終わりではありません。
事業成果につなげたいのであれば、読者にその後どのような行動を取ってほしいのかまで決めておく必要があります。
たとえば、次のようなゴールが考えられます。
ゴールを明確にしておけば、書籍のテーマ、内容、プロフィール、ホームページ、出版後の活用方法まで一貫して設計できます。
行政書士が書籍を出版する目的は、本を出版したという実績をつくることだけではありません。
行政書士は幅広い分野で業務を行うことができるからこそ、依頼者から見ると、それぞれの行政書士の違いが分かりにくいことがあります。
そこで書籍を通じて、「何に強いのか」「どのような人を支援したいのか」「どのような経験をしてきたのか」「何を大切にして仕事をしているのか」を体系的に伝えることに意味があります。
特に、制度の概要や一般的な情報をWebやAIで調べやすくなった現在では、知識を持っていることだけでなく、実務経験からどのような判断をするのか、その行政書士ならではの視点を伝えることが重要になります。
出版を検討するときは、「何について本を書くか」だけでなく、「誰に読んでもらい、読んだ後にどのような相談へつなげたいのか」まで考えて企画しましょう。
全国的な認知や幅広い読者への販売を目指すのであれば商業出版、自分の専門分野を伝え、営業や問い合わせ、ブランディングへ活用したいのであれば企業出版など、目的によって適した出版方法も異なります。
出版社に本を出版してもらうためには、著者の魅力やメッセージを的確に伝える、質の高い企画書が必要です。
初めて書籍を出す方や、なかなか2冊目のお声がかからない方には、商業出版の企画書作成からサポートしてくれるプロの存在が不可欠。ベストセラーの仕掛け人である、実績が豊富な出版プロデューサーをご紹介します。

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| 土井氏の著書 | 「『伝説の社員』になれ!」10万部(2023年11月1日調査時点)ほか多数 |
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