YouTubeやSNS、さらにAI検索の普及によって、経営者や専門家が情報発信できる場は一気に広がりました。いまや、動画でノウハウを発信したり、SNSで考え方を伝えたりすることは、特別なことではありません。
その一方で、「これだけ動画が普及した時代に、あえて本を出す意味はあるのか」と感じる方も多いのではないでしょうか。たしかに、認知を広げる速さという点では、動画やSNSのほうが優れている場面は少なくありません。
しかし、だからといって書籍の価値がなくなったわけではありません。むしろ、情報があふれる時代だからこそ、一冊を通じて考え方や専門性を体系立てて伝えられる書籍は、他の媒体にはない役割を持つようになっています。
このページでは、動画と書籍を対立するものとしてではなく、役割の異なるメディアとして整理しながら、動画時代における書籍マーケティングの考え方を解説します。
動画の最大の強みは、接触のハードルが低いことです。文章をじっくり読むよりも、数分の動画を流し見するほうが気軽であるため、まだ課題意識が浅い層や、発信者を知らない層にも届きやすい特徴があります。
また、表情や声のトーン、話し方から人柄が伝わることも、動画の大きなメリットです。特にYouTubeやショート動画では、専門的なテーマであっても比較的やわらかく伝えられるため、見込み顧客との最初の接点づくりに向いています。
つまり動画は、「知られていない人が知ってもらう」段階において、とても相性のよいメディアです。専門家としての存在を見つけてもらい、関心を持ってもらう入り口としては、非常に優秀だといえるでしょう。
一方で、依頼先を本格的に検討する段階になると、見込み顧客が知りたいことは変わってきます。「この人は何を大切にしているのか」「どんな視点で問題を見ているのか」「どの程度の知見や経験があるのか」といった、より深い理解が求められるようになります。
このとき強いのが書籍です。書籍は、単発の発信では伝えにくい背景や思想、判断基準を、順序立てて伝えることができます。テーマに対してどんな問題意識を持ち、どう整理し、どのような考え方で解決へ導くのか。そうした情報をまとまった形で読んでもらえるため、読み手の納得感を高めやすいのです。
とくに高単価商材や無形サービスでは、最終的に選ばれる理由が「知名度」だけで決まることは多くありません。この人なら任せられるという確信を持ってもらえるかどうかが重要であり、書籍はその確信づくりに向いています。
SNS投稿や動画は、接触頻度を増やしやすい反面、情報が次々に流れていく性質があります。一度見てもらって終わることも多く、内容が断片的になりやすいため、深い理解につながりにくいこともあります。
その点、書籍は一度手に取ってもらえれば、読み返される可能性があります。商談前に再読されたり、社内共有されたり、検討段階で改めて参照されたりすることで、接触の質を高める役割を果たします。
情報発信の手段が増えた今、ただ露出を増やすだけでは差別化しにくくなっています。だからこそ、長く残り、深く読まれ、理解を積み上げられるコンテンツの価値は、以前よりむしろ高まっているといえるでしょう。
動画は、まだ自社や自分のことをよく知らない人に対して、興味を持ってもらうための入口として機能しやすい媒体です。検索やおすすめ表示から偶然触れてもらえる可能性もあり、専門的なテーマでも比較的入りやすい形で届けられます。
一方、書籍は入口というよりも、関心を持った相手が「もっと詳しく知りたい」と思ったときの検討材料として力を発揮します。単なる知識提供ではなく、専門家としての全体像を伝えることができるため、依頼先を比較している相手との相性がよいのです。
つまり、動画は出会いのきっかけ、書籍は理解を深める材料と考えると、それぞれの役割が整理しやすくなります。
書籍というと、「権威性が出る」「すごそうに見える」といったイメージを持たれることがあります。もちろん、出版実績そのものが一定の信頼補強になる場面はありますが、実際の成果につなげるうえで重要なのは、見た目の権威づけだけではありません。
本当に大切なのは、読者に「この人の考え方は筋が通っている」「自分の課題を理解してくれそうだ」と感じてもらうことです。その意味で、書籍の価値は肩書きを飾ることよりも、納得感をつくることにあります。
特に、士業・コンサル・医療・BtoBサービスのような分野では、知識そのものよりも、どう判断する人なのか、どんな基準で提案する人なのかが重視されやすいものです。書籍は、そうした“判断軸”を伝えるのに向いています。
書籍も動画も、それ単体で完結するものではありません。どれだけ良い内容であっても、次の行動につながる導線がなければ、成果には結びつきにくくなります。
たとえば動画で認知を得ても、自社HPやサービスページにうまくつながっていなければ、問い合わせには至りません。同様に、書籍で深い信頼を得ても、相談窓口や資料請求ページ、セミナー案内などへの動線が弱ければ、ビジネス上の成果は限定的になります。
だからこそ、動画と書籍は単独で考えるのではなく、最終的にどこへ着地させたいのかを踏まえて設計することが大切です。認知から信頼形成、そして問い合わせや面談へとつなぐ全体設計の中で、それぞれの役割を持たせることが、これからの書籍マーケティングでは欠かせません。
書籍マーケティングが向いている代表例として挙げられるのが、士業やコンサルタント、医師・クリニック経営者のような、信頼がそのまま依頼につながりやすい業種です。
これらの仕事では、サービス内容だけを見て機械的に選ばれることは少なく、どんな考え方で対応してくれるのか、どこまで専門性があるのか、自分の課題を理解してくれそうかといった点が重視されます。
こうした領域では、短い発信だけで十分な信頼を得るのは簡単ではありません。だからこそ、考え方や事例、判断軸をまとまった形で示せる書籍が活きてきます。
書籍マーケティングは、商品やサービスの単価が高く、比較検討に時間がかかる商材とも相性がよい傾向があります。
高単価商材では、見込み顧客がすぐに決断することは少なく、複数の会社や担当者を比較しながら慎重に判断するのが一般的です。その過程では、単なるスペック比較だけではなく、「この会社は何を強みとしているのか」「担当者の考え方は信頼できるか」といった点まで見られます。
このようなケースでは、動画や営業資料だけでなく、検討材料として手元に残る書籍が意思決定の後押しになることがあります。
書籍マーケティングが向いているのは、商品やサービスの説明だけでは魅力が伝わりにくい会社でもあります。たとえば、無形サービスを扱う会社や、代表者自身の思想・判断軸が競争力になっている会社では、何を提供しているかと同じくらい、どんな考え方で仕事をしているかが重要になります。
こうした会社では、サービス紹介ページや営業資料だけでは、どうしても伝えられる内容に限界があります。料金や支援内容、実績は示せても、「なぜその方針なのか」「何を大切に意思決定しているのか」「他社と何が根本的に違うのか」といった部分は、短いフォーマットでは十分に伝わりません。
書籍は、この“背景”を伝えるのに適した媒体です。代表者がどのような経験を経て現在の考え方に至ったのか、顧客のどんな課題意識に向き合っているのか、どのような価値を提供したいのかを、一貫した流れの中で示すことができます。
一方で、書籍マーケティングが優先度の高い施策とはいえないケースもあります。たとえば、低価格帯で比較的すぐに購入が決まる商材や、価格訴求が中心になるビジネスでは、書籍よりも広告やSNS、動画のほうが成果に直結しやすいことがあります。
また、自社の強みや訴求テーマがまだ整理できていない段階では、書籍を出してもメッセージがぼやけやすくなります。書籍は情報量が多い分、軸が定まっていないと「結局何を伝えたい本なのか」が曖昧になり、結果的に信頼形成にも問い合わせ獲得にもつながりにくくなります。
書籍マーケティングは、単に「本を出すこと」自体が目的ではありません。本を使って何を起こしたいのかが明確な会社ほど、成果につながりやすい施策だと考えるべきでしょう。
動画の役割は、まず見込み顧客との接点を増やすことです。YouTubeやショート動画では、検索やおすすめ表示を通じて、まだ自社を知らない人にも接触できます。専門性の高いテーマでも、短く整理して発信することで、「この分野に詳しそうだ」「話がわかりやすい」と感じてもらいやすくなります。
また、動画では人柄が伝わるため、代表者や専門家に対する心理的な距離を縮める効果も期待できます。特に無形サービスでは、情報の内容だけでなく、話し方や雰囲気も信頼形成の一部になるため、動画は入口施策として非常に有効です。
そこで次に活きるのが書籍です。動画で興味を持った相手に対して、より深い情報を届けることで、単なる認知を信頼へと変えていく役割を担います。
書籍では、専門知識を体系立てて説明できるだけでなく、著者が何を課題と捉え、どのような考え方で解決しようとしているのかまで示せます。これは、比較検討の段階に入った見込み顧客にとって非常に重要です。なぜなら、依頼先を選ぶときに見られているのは、知識の有無だけでなく、自分たちの課題にどう向き合ってくれそうかだからです。
動画がきっかけをつくるメディアだとすれば、書籍は「この人に相談してみたい」と思ってもらうための材料になるメディアだといえるでしょう。
動画で認知を取り、書籍で信頼を育てても、最終的に問い合わせや面談につながらなければ、ビジネス上の成果は生まれません。そこで重要になるのが、HPやLPへの接続です。
たとえば、書籍紹介ページに著者の考え方や実績をまとめ、相談窓口や資料請求、セミナー案内へつなげる。あるいは、動画の概要欄やプロフィールからHPへ誘導し、そこで書籍の存在を見せることで理解を深めてもらう。こうした設計があって初めて、各媒体が連携し始めます。
つまり、動画と書籍はそれぞれ単体で完結するものではなく、最終的に成果地点へ導く受け皿としてのWeb導線が欠かせないのです。
ここまで見てきた通り、動画時代における書籍マーケティングの本質は、「本を出すこと」ではなく「本をどう導線の中に位置づけるか」にあります。
書籍を出しただけで自然に問い合わせが増えるとは限りません。むしろ、出版後にどう見せるか、どこで使うか、どの行動につなげるかまで設計できているかどうかで、成果は大きく変わります。
たとえば、営業現場での活用、セミナーでの配布、HPでの導線設計、動画との連携、既存顧客への提供など、活用場面は複数あります。こうした接点ごとに役割を持たせることで、書籍は“単なる実績”ではなく、マーケティング資産として機能しやすくなります。
動画と書籍は、どちらも信頼形成に使える媒体ですが、得意な役割は同じではありません。YouTubeと書籍の違いを比較しながら、どの段階の見込み顧客にどちらが向いているのかを整理します。
出版には、影響力向上、問い合わせ獲得、採用広報、セミナー集客、既存顧客への理解促進など、さまざまな目的があります。同じ「本を出す」でも、何を成果とするかによって、企画の切り口も活用方法も変わります。
たとえば、問い合わせ獲得が目的であれば、読者が相談したくなるテーマ設計や導線設計が重要になります。一方、採用広報が目的であれば、代表者の思想や会社の価値観が伝わる内容のほうが効果的です。
このように、目的が曖昧なまま出版を進めると、内容も活用方法もぼやけやすくなります。だからこそ、書籍マーケティングでは最初のゴール設定が非常に重要です。
出版の進め方を考えるうえでは、商業出版と企業出版のどちらが適しているかも整理しておきたいポイントです。
商業出版は、出版社側に企画の価値や市場性を認めてもらう必要があるため難易度は高いものの、全国流通や話題化による影響力の拡大が期待できます。一方、企業出版は費用負担がある代わりに、目的や訴求内容を反映しやすく、ビジネス活用を前提とした設計がしやすい特徴があります。
どちらがよいかは一概にはいえません。影響力や認知拡大を重視するのか、問い合わせ導線や営業活用などの目的達成を重視するのかによって、選ぶべき方法は変わります。
書籍は、出版した時点で終わりではありません。むしろ重要なのは、その後どう活用するかです。
たとえば、動画の概要欄やプロフィールから書籍を案内する、HPで書籍紹介ページを設ける、営業資料として使う、セミナー参加者に配布する、採用候補者への理解促進に使うなど、活用の場面はいくつもあります。こうした“公開後の活用設計”があることで、書籍はマーケティング施策として機能しやすくなります。
特に企業出版では、出版後の導線設計まで見据えてはじめて、費用対効果を考えやすくなります。本をつくることよりも、本を使って何を動かすかが成果を左右するといってよいでしょう。
動画やSNSが主流になった今でも、書籍の価値がなくなったわけではありません。むしろ、情報があふれ、発信が短文化する時代だからこそ、考え方や専門性を体系立てて伝えられる書籍は、深い信頼形成の手段として意味を持ち続けています。
動画は認知の入口として強く、書籍は理解と納得を深める材料として強い。そして、その先にある問い合わせや面談、採用やセミナー集客といった成果につなげるには、HPやLPなどの受け皿が必要です。
これからの書籍マーケティングは、「本か動画か」を選ぶ話ではありません。動画で見つけてもらい、書籍で信頼を育て、Web導線で成果につなげる。この全体設計の中で、書籍をどう位置づけるかが重要になります。
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